Salon de Shimaji
今回、バーマンに扮した、文筆家の先生は、この日も目の醒めるような
ブルーのジャケット。
そして先日の大井先生との対談の時にも言及していた髑髏のリングを
はめていらっしゃる。
これは、自分もいつか必ず死すべき存在であることを忘れるなという
ということを喚起させるための、シマジ教の秘密のリングだと仰る。
まさに、ラテン語のmemento moriが戒める内容である。
この写真の奥の彼の右手の指に鈍く輝く髑髏が写っているのが
おわかりだろうか?
そして10種類くらい?あるコースターもブルー。
それぞれに白い文字で、シマジ語録言葉が印刷されている。
12種類あるから、10人くらいで来ると揃うんだけどね、とのこと。
こちらの公式グラス?と島地さんが勝手に決めた(笑)のはドイツの
Zwiesel(ツヴィーゼル)社のSCHOTT ZWIESEL(ショット・ツヴィーゼル)
シリーズの中でも10GRADというその名前の通り、グラスの底が10度傾い
たものである。
傾いたグラスをみて、身体がグラリと揺れたと思ったが、それは僕が
早々に酩酊したわけではなく、このグラスに秘められた遊びゴコロに
よるものである。
美女がこれで、揺れたと錯覚したならば、しめたものである。
そして、島地さん自らが作ってくださるスパイシー・ハイボールを
堪能した。
先ほどのグラスに大きなアイスキューブを3つ入れ、そこに10年ものの
タリスカーをシングルより少なめに注ぐ。
その上から、山崎の天然水で作ったソーダ、Premium Soda from Yamazaki
を静かに注ぎ、ステアは決してしない。
愚かなる僕は、しかし、知ったかぶりをしないだけの謙虚さを以って
バーマンに質問した。何故、ステアしてはならないのですか?と。
ステアすると、この微炭酸のガスが抜けてしまい、香りも飛んでしまう
から。タリスカーの比重が軽いので、待っていれば、ゆっくりとソーダの
上に上ってくるのでそれを、待つが良い、と丁寧に教えて下さる。
実際にステアすることのオリジンである娼婦たちのエピソードは、
現在発売中のPenの店主の文章に詳しい。
仕上げに、サロン・ド・シマジとタリスカーのダブルネームのハンド
ミルで、黒胡椒を3度挽いて、グラスに振りかける。
味わった瞬間、タリスカーがほのかに甘く立ち上がったように感じた
くらいにこの胡椒のピリ辛さが、ウイスキーの味を逆説的に引き立てている。
ここで、色々なお話をさせて頂きつつ、色々なものを見せて頂き…
いや、ここにそれを書くのは野暮であろう。
ほんの束の間、僕は憧れていた方を独り占めするのだった。